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2023年4月1日より、相隣関係に関する新たな民法が施行開始されました。(※1)
相隣関係とは、隣接する土地の所有者が、境界などに関するお互いの使用を円滑に調整する関係を指します。
所在不明の土地を解消するために隣地使用権などが見直され、内容がより具体的に示されたためトラブルを未然に防げるでしょう。
今回は、相隣関係の改正点や改正後の生活への影響などを詳しく解説します。
※1)参考:法務省民事局 民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要
https://www.moj.go.jp/content/001392343.pdf
相隣関係に関する改正内容は、以下のとおりです。
・隣地の使用に関する権利
・ライフライン設備の設置、設備使用に関する権利
・越境した枝の切除に関する権利
隣地の使用に関する権利が改正される前は、隣地所有者の承諾が得られない場合、隣地への立ち入りは不可。
承諾に代わる判決を得て立ち入る必要があり、所在不明の際は許可がおりず立ち入りが困難です。
また、ライフラインの設備や設備使用に関する権利が改善される前は電気や水道、ガスに関する規定がありませんでした。
そのため、隣地の所有者が設置に応じない、所在不明で承諾が得られない場合は、ライフラインの設置が難しいケースもあったようです。
そして、多くの問題となったのが竹木の管理。
隣地の木の「枝」は所有者の同意を得て切ってもらう必要があり、所有者以外の勝手な切除は不可能でした。
木が共有物である場合は、越境した枝の切取りは共有物の変更に該当するため、共有者全員の同意が必要となります。
共有者全員の同意を得るためには多くの時間や労力が必要となり、合理的ではないでしょう。
相隣関係の改正による生活への影響は、以下のとおりです。
・隣地所有者の承諾がなくても、必要な範囲内ならば隣地の使用権利がある
・障壁や建物築造だけでなく、その他の工作物の設置や測量のために隣地の使用権利がある
・規定条件を満たしていれば、隣地などにライフラインの引き込み設置ができる
・隣地の木が越境してきた場合、条件を満たせば越境した枝の切除ができる
・木が共有物である場合、共有者のうち1人から承諾を得れば越境した枝の切除ができる
境界標調査や測量のための隣地使用権や、土地所有者への設置や改築、修繕及び維持に要する資金の支払いなどが新しく明記されました。
隣地の使用に関する権利では、以下に該当する必要があります。(※2)
・境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
・境界標の調査又は境界に関する測量
・改正後民法233条3項の規定による枝の切取り
住居者の承諾がなければ、住居内へは立ち入りできません。
ライフラインに関する権利に関しては、土地所有者の損害が少ない条件を選びます。
ライフラインの設置や使用をする場合、設置者は土地所有者に使用目的や場所、方法などの事前通知が必要です。
また、設置者は一年ごとに隣地所有者に補助金を支払わなくてはなりません。
そして、木の枝に関しては、以下の条件を満たした場合に切除が可能です。(※3)
・竹木の所有者に切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき
・竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき
・急迫の事情があるとき
民法の改正により相隣関係に関するルールがより明確となりましたが、大切なのは話し合い。
隣地所有者と連絡が取れる場合は、事前に関係を深めておき、トラブルを起こさないようによく話し合いをしましょう。
※2)参考:e-GOV法令検索 民法第209条1項 隣地の使用
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
※3)参考:e-GOV法令検索 民法第233条3項 竹木の枝の切除及び根の切取り
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
2023年4月1日に相隣関係に関する民法が改正され、枝の切除などができるようになりました。
相隣関係に関する条件は、以前より内容が明確化。
使用権利の範囲が広がり、所在者不明土地の管理や隣地に関して効率よく問題解決ができるようになりました。
隣人や土地所有者との関係性を大切にし、改正民法をうまく活用しましょう!